在宅医療・訪問看護への影響
2020年度の診療報酬改定は、医療従事者の負担軽減と住み慣れた地域でその人が持っている能力に応じて自立した日常生活が送れるように、身近で分かりやすい医療の実現を目指すものでした。在宅医療や訪問医療がどのように変わるのか、具体的に見ていきましょう。
複数の疾患があっても専門的な訪問診療を受けられる
前回の診療報酬改定ではかかりつけ医以外の専門的な診療が必要な場合は求めに応じてほかの病院の医師も訪問診療を行えましたが、「6ヶ月を限度として」という制限がありました。しかし、今回の診療報酬改定では、かかりつけ医と情報を共有して訪問診療にあたる場合、要件を満たせば12ヶ月以上も算定できるようになったのです。例えば、皮膚疾患や口腔疾患、精神疾患など様々な病気を抱えている患者さんも、在宅で専門的な診療が受けられるようになりました。医療依存度が高い場合は病院に入院するのが一般的でしたが、これにより病院ではなく自宅で生活することも可能になったのです。また、それぞれの専門医が制限を気にすることなく診療できるため、より力を発揮しやすくなりました。
訪問診療が受けやすくなった
ひとつの事業者が通所・訪問・宿泊の介護サービスを提供している小規模多機能型居宅介護施設を利用する人に対して訪問診療を行う場合、これまでは「宿泊サービスを利用する30日前に自宅で訪問診療を行っている場合にのみ」算定することが可能でした。しかし、今回の改定では、退院直後に小規模多機能型居宅介護施設で宿泊のサービスを受けた利用者に対して、事前に訪問診療を受けていなくても算定できるようになったのです。これにより、自宅に戻ることが難しく、小規模多機能型居宅介護施設を利用せざるを得ない人も訪問診療を受けやすくなりました。
訪問看護ステーションの人員配置
年々在宅医療を必要としている人が増えています。それを受けて、2014年度の診療報酬改定で医療依存度の高い患者さんを受け入れ、ターミナルケアにも積極的に取り組む訪問看護ステーションへの評価として「機能強化型訪問看護管理療養費」が算定できるようになりましたが、看護師の確保が難しいなどの問題もありました。それを解消するために今回の改定では人員配置が見直されたのです。「配置基準に定められた看護職員のうち1名は非常勤を常勤換算してもよい」と変更されたため、家事や子育てなど時短で働く非常勤の看護師も活躍の場が広がったのです。また、機能強化型訪問看護管理療養費を算定できる事業所が増えるため、より質の高い訪問看護を提供できるようにもなりました。しかし、新たに追加された基準によりリハビリ職を含む職員のうち看護師が6割以上になるように構成する必要が出てきた、施設によっては算定が難しい場合もあります。