地域包括ケア病棟の見直し
2020年度の診療報酬改定では病院単位での機能分化を見据えた動きもありました。中でも注目を集めたのが、地域包括ケア病棟の見直しです。これにより、400床以上ある大病院ではベッドコントロールが難しくなる可能性が出てきました。
地域包括ケア病棟の役割
地域包括ケア病棟は「ポストアキュート」と「サブアキュート」の2つの入院機能を担っています。「ポストアキュート」は急性期は過ぎたもののまだ入院治療が必要な患者さんを受け入れる機能です。一方、「サブアキュート」は状態が悪化した在宅医療の患者さんを受け入れる機能です。2020年度の診療報酬改定では「ポストアキュート」への負担が大きい現状を打破し、「サブアキュート」を強化することになりました。これにより現場はどのように変わるのでしょうか。
現場はどのように変わるのか
まずは400床以上ある大病院から見ていきましょう。大病院にある地域包括ケア病棟は、転棟患者の割合に制限とペナルティーが設けられました。地域包括ケア病棟には同じ病院のICUやHCUといった急性期病棟から転棟する患者さんが少なくありませんが、今回の改定でその割合が6割を超えた場合は診療報酬が1割減となったのです。
例えば、急性期病棟に入院しているものの経過が良好で入院当初ほど看護必要度が高くない患者さんは退院まで一旦地域包括ケア病棟に移り、リハビリをしながら退院を目指す、というのがこれまでの流れでした。しかし、今回の改定で同じ病院での転棟を抑える必要ができたため、このような調整は難しくなっていくと予想されます。
そのため、地域包括ケア病棟への転棟患者さんが多い場合は、急性期病棟はほかの病院の地域包括ケア病棟への転院を増やす、もしくは入院日数を短くする、さらに地域包括ケア病棟はほかの急性期病院や在宅の患者さんを積極的に受け入れるようにしなければなりません。
在宅との連携が大切
制限が付いた大病院の代わりに地域包括ケア病棟の中心になると期待されているのが、200床未満の中小病院です。中小病院の地域包括ケア病棟も「サブアキュート」を強化するために、「自宅や介護施設から入院した患者さんの割合は10%以上から15%以上へ」「自宅や介護施設から緊急入院した患者さんの人数は3人以上から6人以上へ」と基準が見直されました。しかし、現時点でほぼ全ての地域包括ケア病棟でこの条件を満たしているため、「基準が厳しくなって急な変化に付いていけない」ということはないようです。
ただし、条件は上記の2つだけではありません。「病院の看護師が在宅の患者さんを訪問する」「病院に併設した訪問看護ステーションがある」なども重視されるため、地域包括ケア病棟にはこれまで以上に在宅との連携が求められています。