改定による看護師への影響
2020年度の診療報酬改定によって現場で働く看護師に、どのような影響が出るのでしょうか。以前から医療業界では医師や看護師のオーバーワークが大きな問題となっていました。そのため、今回の改定では働き方改革にも着手しています。看護師の場合は夜勤の看護体制について、医師の場合はタスクのシフトについてそれぞれ盛り込まれました。その中で注目を集めているのは特定看護師です。特定看護師になるには指定された専門機関で研修を受けなければなりません。ここ数年で専門機関の数も増え、設置されていないのはわずか三県です。
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働き方改革の動き
2020年度の診療報酬改定では看護師の働き方についても盛り込まれていますが、それは以前からオーバーワークが指摘され問題となっていたためです。多くの患者さんの健康を守る看護師はやりがいが多く将来性も高い仕事です。しかしその一方で、日勤と夜勤の繰り返しで生活リズムを崩しやすい身体的にも精神的にもハードな仕事です。特に夜勤は日勤よりも人数が少ないため仕事量が多く、責任も重くなります。看護師の負担を少しでも減らすために今回の改定では夜間看護体制加算や看護職員夜間配置加算を算定する項目が追加されました。
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看護必要度の変更
患者さんによって看護必要度は違います。急性期の患者さんには手厚い看護が必要ですが、どの程度介助が必要なのかを測るために導入されたのが「看護必要度」です。2020年度の診療報酬改定では看護必要度のB項目が大きく変更されました。B項目とは患者さんのADLに関する評価です。これまでは、寝返りができなければ0点、何かにつかまれば寝返りができるなら1点、寝返りができれば2点、といったように、患者さんの状態と必要な介助の度合いによって点数化されていました。今回の改定ではそれぞれを分けて評価することになったのです。
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在宅医療・訪問看護への影響
在宅医療に対する関心の高まりに伴い、今回の改定では訪問看護ステーションの人員配置が見直されました。これまでも在宅医療に積極的に取り組む訪問看護ステーションへの評価として「機能強化型訪問看護管理療養費」が算定できましたが、必要な看護師の人数が確保できないといった問題もありました。これを解消するために今回の改定では「配置基準に定められた看護職員のうち1名は非常勤を常勤換算してもよい」となったのです。
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特定看護師に注目が集まる
医師や看護師のオーバーワークが大きな問題となっています。2020年度の診療報酬改定では特にオーバーワークが指摘されている医師の負担を軽減するために、特定看護師を活用した医師の負担軽減が追加されました。診療報酬で特定看護師が認められたのははじめてのことです。主な内容は、「麻酔を担当する医師の一部の行為を特定看護師が実施しても算定可能」といった麻酔管理料に関するものでした。麻酔科医は内科医や外科医よりも数が少ないため、かかる負担も大きめなので、麻酔科医にとっては歓迎すべき見直しでした。
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地域包括ケア病棟の見直し
2020年度の診療報酬改定では病院単位の機能分化にも取り組んでいます。その中でも注目を集めたのが地域包括ケア病棟の見直しです。これまでの地域包括ケア病棟の役割は、ICUなどの急性期病棟から看護必要度が低くなった患者さんの転棟受け入れがメインでした。しかし、今回の改定で転棟の割合は6割以下に抑える必要が出たため、このようなベッドの調整は難しくなる可能性があります。今後は急性期から転棟する患者さんは他の地域包括ケア病棟に転棟するか、入院日数を短くするしかありません。